この記事では実際の企業や商品を例にして解説しているので、どういった企業が生き残り、どういった企業が倒産してしまうのかを読み取ることが可能です。 破壊的イノベーションはどの企業にも必要となることなので、自社に取り入れられるように記事を読み進めてください。
持続的イノベーションが得意と言われている日本ですが、令和において持続的イノベーションと同じかそれ以上に重要なのが破壊的イノベーションです。
破壊的イノベーションを起こせず倒産に追いやられた大企業は数多く存在し、持続的イノベーションのみを続けている企業に属していれば、読者の方の企業が来年には倒産の危機に陥っているといった状況になることも現実に起こる可能性があります。
破壊的イノベーションとは
破壊的イノベーションとは「今までに無いような、新しい商品やサービスを生み出すこと」です。
例えばガラパゴス携帯(ガラケー)からスマートフォン(スマホ)に変わり、直感的に操作ができるようになった令和において、ガラケーを作製していた各企業はスマホを作成する企業に変わっています。
ガラケーのようにボタンを押して選択するのではなく、画面をタッチするだけの直感的な操作ができるようになったことは、今までに無い破壊的イノベーションと言えるでしょう。
総務省が調査し発表した「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、全年代におけるスマホの利用率は92.7%、ガラケーは15.1%と市場の大きさは一目瞭然です。
携帯電話のように急な市場の変化を起こし、ガラケーのように当たり前だった商品を脅かすようなアイデアを破壊的イノベーションと言います。
破壊的イノベーションと持続的イノベーションの違い
破壊的イノベーションが「今までに無いようなサービスを生み出すこと」なのに対して、持続的イノベーションは「顧客のニーズに応え、既存の製品やサービスにさらなる付加価値をつけること」を指します。
スマートフォンを例にすると、従来の方法ではひらがなで「お」と打とうとすると、「あ行のボタンを5回」押さなければなりません。現在ではフリック入力により、あ行のボタンを下にフリックすることで、今までよりも早く入力ができるようになりました。
スマートフォンのフリック入力のように、既存の製品や技術をより使いやすくしていくようなイノベーションのことを、持続的イノベーションと言います。
破壊的イノベーションの必要性
昭和から平成や令和にかけて大きく変わったビジネスにおける傾向のひとつに、I Tやグローバル化の影響で市場が急速に変化するようになったことがあげられます。
I T技術が急速に成長により携帯電話がガラパゴス携帯からスマートフォンに変化したように、自社サービスの価値が0になるような破壊的イノベーションがいつ起こるかわかりません。
目まぐるしい変化が起こる時代では、持続的イノベーションのみで企業を長く続けようとしても、すぐに新しいサービスに市場を席巻されてしまいます。
持続的イノベーションで市場の立ち位置を確立しながら、破壊的イノベーションを生み出すような環境を作っておくことで、市場がなくなるリスクに備えた経営ができるでしょう。
イノベーションのジレンマ
イノベーションのジレンマが起こる原因は、「持続的イノベーションを生み出しすぎている」ことが挙げられます。
アメリカに本拠地を置くイーストマン・コダックは、世界で初めてロールフィルムやカラーフィルムを発売した、かつてデジタルカメラを販売していた世界最大の写真用品メーカーです。(現在は商業印刷の大手)
デジタルカメラが流行っていた当時は携帯電話もすでに販売されていましたが、現代のように携帯電話で綺麗な写真を撮ることが難しかったため、多くの人がデジタルカメラを選ぶことが当然と考えていました。
またコダックは市場のニーズに応えるため、最新機器を発売しながら持続的イノベーションを繰り返しおこなってきた企業でもあります。
しかし携帯電話でも十分な写真を撮ることができるようになり、唐突に顧客が携帯電話のカメラで十分と考え始め、コダックは経営破綻の危機にまで追いやられてしまいました。
コダックを襲った急な市場の反応の変化こそがイノベーションのジレンマです。以下のイラストはコダックに起こったイノベーションのジレンマを可視化したものなので、解説とあわせてご覧ください。
初めのうちは顧客のニーズに応えるために、持続的イノベーションを生み出していきますが、ニッチな顧客や少数のファンの要望を受けだんだん過度な持続的イノベーションを生み出し、「モノはいいけど必要とされない」サービスや製品が出回ることになります。
過度な機能がついた製品は高価になることが考えられ、顧客は特別な機能はいらないから安い製品が欲しいといった考えになるでしょう。
「デジタルカメラよりは画質が悪いけどそれなりに綺麗」といった、破壊的イノベーションにあたる携帯電話が出てきたため顧客は携帯電話にシフトし、顧客の気持ちを置き去りにした企業は、売上が減り経営破綻の危機に陥ってしまいます。
破壊的イノベーションを起こしにくいのは大企業
大手企業はイノベーションを起こしにくい傾向にあります。主な理由が以下の2つです。
・株主やファンに逆らい辛い
・既存ビジネスでのみ有種な人材しかいない
大企業や古くから存在している企業は大株主と言われる、経営判断をするときに意見を無視できないような存在がいることが多く挙げられます。
破壊的イノベーションのような、今までに無いような事業に投資することはリスクが大きく、避けてほしいと考える株主は多いでしょう。また自社や製品のファンにあたる顧客は過剰な機能を求め、企業は応えざるを得ない状況に陥ることもあります。
また大企業であれば優秀な人材は多くいますが、多くの場合は既存事業を行ううえで優秀な人材です。破壊的イノベーションを生み出すのが苦手であり、新規事業では存分に力を出せないことが挙げられます。
破壊的イノベーションによる新規事業を進めるために、既存事業に関するスキルではなく新規事業に関する知識を持つ人間を雇う必要があるでしょう。
破壊的イノベーションの事例
破壊的イノベーションには「ローエンド型」と「新市場型」の2種類があります。各項目に分けて事例を紹介していきます。
ローエンド型の破壊的イノベーション
ローエンド型の破壊的イノベーションとは、商品やサービスを今の価格よりもさらに低価格で販売できるようにするイノベーションです。DAISOが市場にあるニーズに応えながらも低価格で販売していることが挙げられます。
ローエンド型で市場に参入し、ミドル・ハイエンドと顧客層を拡大していくことも可能です。実際にダイソーでは100円の商品だけでなく、500円の商品が見られます。
ユニクロ
ユニクロは大量生産をすることで低価格を実現させ、ローエンド型の破壊的イノベーションを生み出した企業です。
ファッション業界では1990年代に高級路線を開拓する動きが目立ちましたが、ユニクロは低価格帯を追求して成功しました。2022年時点ではさらに低価格帯となるGUを展開しており、ユーザー層を拡大していった企業でもあります。
DAISO
いわずと知れた低価格の象徴ともいえる企業が、DAISOです。100円で日用品のほとんどが買えるローエンド型の破壊的イノベーションにより、雑貨屋やスーパーマーケットの市場を脅かしました。
「多少チープなものでも安いものが欲しい」といった、スーパーマーケットに起こっていたようなイノベーションのジレンマを利用したビジネスといえます。
IKEA
スウェーデン発祥の家具メーカーであるIKEAもローエンド型の破壊的イノベーションを起こした企業です。
「家具は組み立てたものが送られてくる」ことが当たり前だったのに対し、IKEAは購入者が自分で組み立てられるようにすることで、人権費を抑えて家具を低価格で販売することに成功しました。
また家具を組み立てずに保管しているためコンパクトになり、保管スペースをより有効に使えるようになったことも、低価格を実現した理由です。
Airbnb
「民泊」という概念でホテルや旅館といった宿泊業界にダメージを与えたローエンド型の破壊的イノベーションです。
リーズナブルに宿泊施設を利用できるだけでなく、サウナ付きの家やユニークな家、ペットの同伴が可能といったホテルや旅館では味わえない宿泊の雰囲気を味わうことができます。
新市場型の破壊的イノベーション
技術やアイデアを使い、いままでに見たことのないような商品やサービスを市場に投下し、新たな価値観やニーズを作り出すイノベーションです。
SONY
携帯型音楽プレーヤーを販売しているSONYは、ウォークマンを発売したことでCDや家庭でのステレオを扱う業界に大きなダメージを与えました。
ターゲットは「外出時に何も聞かずに歩く人」で、この戦略がウォークマンをヒットさせた戦略といえるでしょう。発売されてからは家庭でも利用されるようになり、家族がいる状態でも気にせず音楽を聴けるため、重宝されました。
任天堂
「Wii」の発売によってゲーム業界を一新したのが任天堂です。Wiiリモコンやヌンチャクといったセンサー付きのコントローラーを使い、自分の動きとゲーム内のキャラクターの動きが連動する新しいイノベーションを生み出しました。
ボタンを使った難しいコマンドではなく、体を動かすことでキャラクターを操作できるため、子どもや高齢者といった顧客層を獲得することに成功しています。
Netflix
オンラインDVDレンタルサービスからストリーミングサービスへと移行したNetflixは、アメリカの大手ビデオレンタル会社であるBlockbusterを倒産へと追いやるほどの脅威となりました。
全てオンライン上で完結するため、在庫管理や店舗、従業員といったコストを削減できます。在庫を持つ従来のレンタル事業はビジネスモデルを変更せざるを得ないほどの、破壊的イノベーションです。
またNetflixは自社で映画を撮影する技術を持ち始めたため、既存の映画関係の業界はビジネスモデルを変更するなどといった判断を迫られています。
Apple
いわずと知れた新市場型の破壊的イノベーションというと、スマートフォンが挙げられます。AppleはiPhoneというスマートフォンを発売することで、いままでにないような新しい市場を作り出しました。
画面をタップするだけで相手に電話をかけられるような、直感的な操作が可能になったことが、市場を大きくした理由の一つでしょう。
スマートフォンの市場が開拓されたことで、従来の携帯電話であるガラパゴス携帯だけでなく、CDやDVDといった音楽や映像の市場までも変えてしまう驚異的な存在になってしまいました。
破壊的イノベーションを起こす方法
企業が破壊的イノベーションを起こす方法を3つ紹介します。
・破壊的イノベーションを起こせる人材を確保
・破壊的イノベーションを起こせる人材を放置
・すでに発明された破壊的イノベーションを買収
それぞれを以下で解説します。
破壊的イノベーションを起こせる人材を確保
スティーブ・ジョブズがスマートフォンを発明し、携帯電話や音楽における市場を変えたような、破壊的イノベーションを起こせる人はごくわずかです。ミュージシャンが成功する確率は10%といわれているため、それだけ0から1を生み出すことが難しいといえます。
また破壊的イノベーションを発送するような人材は、単純に仕事が早かったり効率的だったりというわけではないため、見極めることが非常に困難です。
しかし革新的なイノベーションを起こす人には特徴があります。特徴は「すでに何か新しいことを思いついている」ということです。
過去に新しいサービスを開発していたり、自分で製作していたりする人は独創的な思考を持っていることが考えられるため、一つの採用基準となるでしょう。
破壊的イノベーションを起こせる人材を放置
破壊的イノベーションを起こせる人材は、ある意味での暇を与える必要があります。あれもこれもやらないといけなく、仕事で手一杯になっていては新しいことを考える余裕がなくなってしまうため、暇を与えることが重要です。
企業ができることとしては、ITやAIの技術を取り入れ、ひたすら業務の効率化に努めることが挙げられるでしょう。
すでに発明された破壊的イノベーションを買収
破壊的イノベーションを生み出すような人材を確保すうることは容易ではなく、その人材は必ず破壊的イノベーションを生み出すというわけではないため、賭けるような感覚があり実行することは難しいです。
しかしすでに開発された破壊的イノベーションであれば、より成功する可能性を引き上げることができるでしょう。
FacebookがInstagramを買収し、GoogleがYouTubeを買収したように、次に時代を席巻しそうな発明を買収することで「人材が破壊的イノベーションを起こさないかもしれない」といった不安を解消することができます。
資金力がある企業だからこそできる戦略ではありますが、M&A戦略があたりまえとなり、将来が有望なスタートアップ事業を虎視眈々と狙っている企業がたくさん存在しているため、常に最新の情報に触れるようにしておくことがポイントです。
まとめ
破壊的イノベーションを見つけ出すことが、企業の存続に大きく関わってきます。しかし破壊的イノベーションを生み出せる人材は少なく、容易に見つかりません。
これから成長する事業を見つけ出し、M&Aを活用しながら経営をしていくことで長く続く企業となっていくでしょう。
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