本記事は大企業で新規事業を立ち上げる際に押さえておくべきプロセスと成功の秘訣を4つご紹介しているものです。本記事を読むことでイマすぐ使えるフレームワークや失敗するポイントについても理解できます。
社会が目まぐるしく変化するなかで、新規事業の立ち上げを視野に入れる企業が増えています。リスク分散のために新規事業を立ち上げ、収入の柱を増やしたいと考える企業が多いでしょう。
しかし事業の立ち上げ経験が少ないと「どうやって事業領域を決めるのか」「どうやって新規事業を進めていけばいいのか」という疑問が浮かびます。本記事を読むことで新規事業立ち上げのプロセスがわかり、失敗のパターンと成功のコツを知ることができます。
新規事業の立ち上げに必要な要素は?
新規事業を立ち上げにおいて100%成功させる方法はなく、一番大切なことは失敗するリスクをできるだけ減らすことです。新規事業は1割も継続しないと言われる中では、継続的に続けられる事業は成功と呼べるでしょう。
以下の4つを知ることで、成功率を上げることができます。
・プロセスを知る
・フレームワークに当てはめて考える
・成功のためのポイントを抑える
・失敗パターンを知る
とくにプロセスとフレームワークは、新規事業の業界を決めたりサービスを決めたりする時に欠かせません。上司に新規事業のプレゼンをするときにも、分析した市場を説明することで説得力が増します。
次の章からは4つの項目についてより詳しく解説しているので、新規事業の立ち上げに役立ててください。
新規事業立ち上げの6つのプロセス
新規事業の立ち上げにおいて何から始めればいいのかわからないという方のために、立ち上げのコツとなるプロセスを6つ紹介します。
各ステップを辿ることで新規事業が傾き始めた場合でも、プロジェクトメンバーが目的を持って成功に向かって進むことができるでしょう。
Step1:課題の発見
新規事業の立ち上げでよくある間違いが「やりたい事業を始める」です。ニーズがある場所で事業を展開するから売上が建つため、自分本位でニーズを把握せずに新規事業を展開しても軌道に乗せることはできません。
課題は言い換えれば人が持つ悩みやストレスで、ペルソナ設定を明確にすることで課題発見につながります。失敗パターンで後述していますがペルソナ設定を明確にして悩みを把握することこそ、新規事業の立ち上げから成功までのプロセスの第一歩と言えるでしょう。
Step2:事業ドメインの決定
事業ドメインは経済活動の展開領域のことです。新規事業を立ち上げるには、自社の強みを生かして展開できる事業ドメインを選ぶ必要があります。
企業ドメインという言葉もありますが、企業ドメイン(企業の経済活動領域)の下にいくつかの事業ドメイン(展開している事業)が存在すると言えるでしょう。
課題発見プロセスと合わせると、新規事業の立ち上げでは「自社の強みを活かして悩みを解決する事業」を選ぶことが重要になります。
Step3:提供価値の明文化
提供価値を明確化することは新規事業を立ち上げた時にプロジェクトメンバーが商材を把握し、足並みを揃えて目標に向かうことができます。
外的要因で新しい事業が傾き始めたとしても提供価値が明確になっていることで、軌道を修正できたり新規事業のゴールを見失ったりすることがなくなるため、提供価値を明確にしておくことは大切になります。
Step4:拡大性・収益性の確認
Step4ではStep1で発見したニーズの規模感を把握していきます。新規事業における「ニーズと市場の大きさ」を認識することで、どれだけ顧客がいてどれだけの利益が見込めるのかを想定することが可能です。
ニーズと市場規模を文字にして表すと新規事業が成功した時の利益を想定しやすくなるので、明文化することがコツと言えます。
Step5:ビジネスモデルの構築
このステップではどういった仕組みで売上を上げていくのかを決めていきます。立ち上げた新規事業は、誰に何をどうやってどんな価値を提供していくかを考えましょう。
ビジネスモデルを構築するコツは定番と呼ばれているパターンが6つ存在します。
1.販売モデル
2.小売モデル
3.広告モデル
4.サブスクリプションモデル
5.フリーミアムモデル
6.マッチングモデル
革新的なビジネスモデルを産む必要はなく、他社の既存事業を理解することで自社の新規事業に使えるビジネスモデルとなるでしょう。
Step6:数値目標の設定
ビジネスモデルまでの5つのステップで事業が明確になり、最後に細かい部分を数値化して詰めていきます。新規事業に携わる人数や目標をいつまでにどうするのかを可能な限り数値で明確にすると良いでしょう。
無理なノルマは設定せずに市場を入念に調査した上で数値目標を設定することが、新規事業の立ち上げを成功させる秘訣です。
新規事業に使えるフレームワークを5つ紹介
新規事業を立ち上げるにあたって市場や自社の分析は欠かせませんが、市場に対する情報は膨大で「どんな方法で調べていけばいいのかわからない」と思う方も多いです。
せっかく立ち上げた事業の競争率が高く勝ち残れないと言うことを避けるため、以下のフレームワークに沿って分析をしていきましょう。
1.MVV
MVVは「ミッション(Mission)」「ビジョン(Vision)」「バリュー(Value)」の頭文字をとった、新規事業の目標や方針を示すフレームワークです。MVVを設定することで新規事業立ち上げの目的意識を持ち、チームの士気を上げることができます。
・ミッション(Mission):存在意義、Vision実現への使命
・ビジョン(Vision):実現したい未来、Mission達成時の世界
・バリュー(Value):行動指針、組織の行動基準となる価値観
2.3C分析
3C分析は「市場(Customer)」「自社(Company)」「競合他社(Competitor)」の頭文字をとった、市場環境を把握するためのフレームワークです。市場にあるニーズに対して競合他社を分析し、自社の立ち位置を明確にすることで新規事業のサービスと方向性を具体的に決めることができます。
3C分析を使って市場をいかに把握できるかによって次に紹介するSWOT分析の鮮明性が変わってくるので、力を入れて取り組みましょう。
3.SWOT分析
SWOT分析は「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字をとった、自社や他社の現状と課題を知るためのフレームワークです。
サービスの価格や品質を考慮した内部環境と、競合や市場トレンドといった外部環境にわけて分析することで、新規事業のみではなく既存事業の意思決定にも使われます。
4.PEST分析
PEST分析は「政治的(Politics)」「経済的(Economy)」「社会的(Society)」「技術的(Technology)」の4つからなる、外的要因を分析するフレームワークです。
外的環境の流れに逆らい、新規事業が失敗に繋がるリスクを回避します。反対に外的要因の流れを知っておくことで新規事業は立ち上げ早々に軌道に乗せることも可能です。
5.ポジショニングマップ
ポジショニングマップとは事業の立ち位置を示すためのフレームワークです。方法はまず顧客を想定するための項目を可能な限り列挙します。
「価格は高いのか低いのか」「男性なのか女性なのか」「屋内なのか屋外なのか」想定顧客の項目を可能な限り挙げることがコツです。
自社だけでなく競合他社の立ち位置も同時に把握することで、競合が少ないポジションで戦わずして勝つ可能性を見出せるフレームワークです。
新規事業立ち上げ成功のポイント
新規事業立ち上げのためのプロセスを紹介してきましたが、事業を成功させるためにはポイントとなるコツが存在します。立ち上げ前に確認しておくことで成功率を上げることができます。
1.自社の強みを生かす
新規事業の立ち上げにおいてニーズの把握は大切ですが、把握してすぐ事業を進めてしまうことはとても危険です。ニーズがあるところには他の企業も目をつけているので、ノウハウや資金面で力を持った企業が参入してくる可能性があります。
既存事業で培ったノウハウや自社だからできる強みを活かして、顧客のニーズに応えられる事業を作ることが新規事業を成功させるためのポイントと言えるでしょう。
2.需要予測を厳密に行う
新規事象立ち上げにあたり、需要を予測することが大切です。サービスをどれだけ利用する人がいるのかを明確にすることで、新規事業の利益を予測して参入価値があるかどうかを測ります。利益だけでなくサービス発足時に「どれだけの商品を用意すべきか」を把握しておくことが可能です。
生産過多で在庫を抱えて赤字になることを回避できるため、需要予測は新規事象の立ち上げだけでなく経営をしていく中でも成功のコツとなります。
3.事業撤退ラインを決める
新規事業の立ち上げは入念なリサーチや分析をした上で展開していくことができますが、どんなに正確な情報を入手したとしても100%成功する事業はありません。事業に失敗した時には想定外の損失を被る場合があるので、新規事業を立ち上げる前に撤退ラインを設けておく必要があります。
具体的に「こうなったら撤退する」というラインを決め、躊躇することなく撤退する強い意志が、「事業は負けて企業が勝つ」に繋がります。
4.市場のライフサイクルを見極める
市場のライフサイクルは、誕生から衰退までの流れを指します。具体的な流れは以下の画像の通りです。市場が今どの期間に位置しているのかを把握して、新規事業の参入時期だけでなく、今打つべき施策や撤退のタイミングまで認識することができます。
新規事業を立ち上げて参入するタイミングは、誕生期から成長期に移るまでの期間が得策と言えるでしょう。誕生期では競合が少なく市場を独占できるため、いち早く市場の成長性を見越して参入することが、新規事業の立ち上げから軌道に乗せるための一つの手段と言えるでしょう。
よくある失敗するパターン
収入の柱を増やすために立ち上げた新規事業が既存事業の足枷となり、企業の業績が悪化することもあります。新規事業にはリスクが付き物ですが、損失を回避するためによくある失敗パターンを解説します。
1.ペルソナのニーズを把握していない
新規事業立ち上げにおいてペルソナを可能な限り明確にしておくことが重要です。顧客を想定して「どこにニーズがあるのか」「どんな人に売るのか」を具体的に決めておきます。
以下の表はSoup Stock Tokyoのペルソナ設定です。
2.最低限のチームで始めない
新規事業の立ち上げでは人員を最低限に絞ることが大切です。人員が多くなることで意見の相違が増え、意思決定までのスピードが遅くなります。
新規事業を展開した時は目まぐるしく物事が進み、迅速な対応が求められる場面が多くなることが想定できるでしょう。いつ何が起こっても迅速に対応できるように、ノウハウのある最低限のチームで新規事業を立ち上げることが大切です。
3.参入するタイミングを間違えている
参入時期を間違えば想定した利益を得られないどころか、6つのプロセスに沿った分析が意味をなさなくなる場合もあります。市場のライフサイクルプロセスを頭に入れ、参入時期を見極めることが失敗と損失を回避するための一つの手段です。
新規事業の準備段階で市場を把握することも大切ですが、市場は目まぐるしく変化している
ため、新規事業立ち上げ時にも環境や状況を確認する必要があります。
まとめ
新規事業の立ち上げにおいて、リスクは付き物です。少しでも成功する可能性を上げるためにも、今回紹介したプロセスを踏みながら丁寧に分析する必要がありますが、慣れない分析は思わぬ落とし穴に落ちる可能性があるので、少しでも失敗のリスクを減らすなら分析のプロであるコンサル会社への相談が得策と言えるでしょう。
人の悩みや課題を解決することで事業のアイディアを生み出すことができます。ペルソナを設定することでより顧客に刺さるサービスを提供することが可能です。課題解決では企業の強みが重要な要素となります。身の回りの有識者やメンターの意見を取り入れながら、成功への第一歩を踏み出しましょう。
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