ゲームを用いて新たな価値づくりを提供している株式会社Life Reversal Gaming.。マリオカートの世界チャンピオンや多くの世界記録を保有する代表の髙木光治さんが、どのような経験から起業を決意したのか、その背景や熱い思いをお聞きしました。
まずは簡単に自己紹介と自社紹介をお願いいたします。
株式会社Life Reversal Gaming.(以下LRG.)代表の髙木光治と申します。
LRG.は、ゲームを用いて、社会にとってプラスとなる新しい価値づくりを提供する会社です。
ゲームを活用した企業である理由としては、代表の私と取締役を務めている実の兄、髙木伸夫が、マリオカートで世界大会優勝や世界記録保持の経験があり、得意分野のゲームという観点からまずは事業を展開しようと思ったからです。
その中で、なぜ社会にとってプラスとなる価値提供を行うかというと、先ほど紹介した兄の伸夫が大きな理由となっています。
現在33歳の兄は、18歳の頃から線維筋痛症という難病を患っており、闘病生活と並行しながらYouTubeでゲームの配信や攻略本の作成を行っていました。
その中である時、視聴者の方に兄の病気の件をお伝えすると、バッシングなども想像していた中で、「病気と闘う姿に感動しました」「努力する勇気をもらいました」といった声を多く頂きました。
視聴者を励ます理由の一つになればと思って始めた活動がむしろ、自分たちが励まされていることに気が付き、そんなゲームを通して救われている自分たちが、今度はゲームを通して社会に恩返しをしていきたいという気持ちになり、このLRG.を立ち上げたことが会社設立の背景になります。
LRG.はどのようなことをされている企業ですか?
主な活動としては、まずはゲームを使った環境保全活動が一つあります。
これはeスポGOMIと呼ばれていて、ごみ拾い活動の中にゲームの機能をうまく掛け合わせ、ゲーム要素を通じて簡単に楽しくごみ拾いができるイベントです。
eスポGOMIの様子
また、「ゲームの捉え方は勉強にも変換できる」という自分の考え方を元にした授業も実施していて、特別講師として小学生から高校生まで幅広く学生を相手に講義を行うこともあります。
ゲームに対して攻略法があるように、勉強にもゲームに通ずる攻略法があると思うので、その思いを、学生時代の体験を交えながらお話ししています。
その他に行っているのは、企業のチームビルディングを目的としたゲームを活用した研修です。
これはゲームの仕組みを用いることで上司と部下の関係を中和することができたり、組織の課題感を明確にすることができたり、チームの質の向上を見込めるという効果があり、企業研修としてお呼びいただき、セッションを行っています。
ゲーム×〇〇という発想は何がきっかけで生まれたのですか?
まず私がゲームを始めたきっかけとしては、家族がゲームを好きだったことにあります。
私の父はゲームが好きで、その影響で兄も幼い頃からゲームをプレイをしており、同じように自分もゲームを始めるようになりました。
そして小学校3年生頃にマリオカートの世界大会で優勝し始め、そこから現在に至るまで様々なゲームに関する記録を樹立していきました。
・【マリオカートアドバンス】 全国公式大会 準優勝2回、3位2回 グランプリ2001 全国3位・【大乱闘スマッシュブラザーズDX】 スマブラDX 全国大会 inトイザらス 岡山予選 準優勝・【マリオカートDS】 ジャンプフェスタ大会 優勝・【マリオテニスオープン】 WHF‘12 Summerチャンピオンシップ ベスト8・【ウイニングイレブン2017】 RAGE 2on2オフライントーナメント ベスト16
そんな中、人生のターニングポイントとして、一度ゲームを辞めようと思った時期があります。それは高校生の時です。
当時の私は部活動にも力を入れていて、毎日サッカー漬けの日々でした。しかし、ある時腰椎分離症という怪我を患ってしまい、サッカーができない体になってしまいました。
大好きだったサッカーができなくなり、むしろゲーム三昧の毎日になるのではとよく言われるのですが、当時の自分はサッカーを失ったことで「自分の武器が無くなった」「自分が社会で生きていくにはどうしたらいいんだ」という焦りの方が大きく、社会で生きていくための武器作りとして勉強に力を入れ始めました。
ここで出てくるのが、「ゲーム×〇〇」という考え方です。
全く勉強が得意ではなかった私ですが、問題を解いていくプロセスと「ゲームを攻略していく」という感覚が似ていることに気づき、そのフレームワークに当てはめたところ、これが成功しました。
具体的に言えば、教科における出題傾向の分析であったり、授業から出題される問題や暗記で補える問題の配分、他にもあえて捨てられる範囲や苦手科目の対策など、ゲームで相手のスタイルや特性などを分析する感覚で勉強を攻略していったのです。
そうすると、学校でずっと苦手だった勉強で首席を修めることまで出来るようになり、ゲームの考え方を転換させることができました。
怪我をしたことで自分のやりたかったサッカーが出来なくなり、この経験を機に「ゲーム×勉強」のような、ゲームの考え方を転換するという発想が生まれ、今LRG.で取り組んでいるような、ゲームと何かを掛け合わせた事業を行うことに繋がりました。
会社を立ち上げる上で、大きく考え方の変わったできごとはありますか?
LRG.を設立する前までは、専門商社で働いており、商材を販売する仕事をしていました。
その頃兄はゲーム業界で仕事をしていましたが、マリオカートの世界チャンピオンとして既に業界に名前が認知されており、その当時、同じくゲームをプレイし世界でも戦ってきた弟の自分としては多少の劣等感や妬みのようなものを感じていたのではと思っています。
しかし、自分が社会人2年目の時に、ゲーミングデバイスを始めとするゲーム関係の製品が世の中で流行り出し、自分もその商材を扱うことになったことをきっかけに、ゲームの機種について兄と話す機会がありました。
すると兄の口からは自分の全く知らない情報がどんどん流れてきたことが、自分にはすごく衝撃的でした。
兄がすごいゲームプレイヤーであることはもちろん知ってはいましたが、兄のゲームについて語る真剣な姿を見て、本気で自分の仕事と向き合っている姿に深く感銘を受けたことを覚えています。
それを機に自らの仕事に対する見方が変わり、「難病を患っている兄が生きていくことが難しく困ってしまう社会に対して何かしなくては。兄を助けなくては。」と思いゲームを事業に活かした会社を立ち上げることを決めました。
多様な人生を歩んできた現在、生活や仕事においてどのようなことが楽しいですか?
LRG.を設立してから2年が経ちますが、自分の会社を持った状態で時間が経過していくという経験ができていることはストレスなども含めて今とても楽しいです。
この会社を通してお会いする方々が、自分たちを承認してくれる度に自分たちの考えていたことは間違っていなかったんだと思えることはすごくありがたいですし、今後も励みにもなっています。
eスポGOMIを通して街中のごみを拾う様子
私自身、働く上では「楽しい」という思いを1番大事にしているので、そこに対して正直に考えてもこの会社は全てが楽しいです。
よく好きなことを仕事にできない、という話もあると思うのですが、それはまだそのやり方を知らないだけだと思っていて、誰にでも生み出せる可能性はあると考えています。
社会に出ないとお金を稼ぐことの大変さに気付けないように、何かを作るノウハウであったり、人生のシナリオの描き方を一度経験さえすれば、そのやり方は学ぶことができます。
そうやって経験や体験をすることでやり方を知り、人生を楽しむノウハウを学んで行けばそれは誰にでも出来ることだと思うんです。
同時にそういう環境を人々に提供していくことが自分の仕事だとも思っていて、最近の世の中はこうあるべき、こうすべき、といった好きを我慢しないといけない場面が比較的多いなとも思っています。
なのでそれに負けないというか、そういう環境を作っていくための活動を今2年間できているということは幸せなことだと感じます。
最後に、Co-StudioやLRG.を通して実現したいことにかける想いをお聞かせください。
私はこのLRG.という会社を通して、「ゲームって悪くないんだね」という世界観や価値観を世の中に作っていきたいと考えています。
世の中、特に日本においては、ゲームとは勉強に悪影響なものであったり、マイナスなイメージを持たれていたりといった考え方を持たれている方もいるかと思いますが、そんなイメージを払拭し、社会貢献のためのコミュニケーションツールとして素敵なものであるという認識が当たり前だと言える社会にしていきたいです。
エンターテイメントというものは必ずしも全ての人に理解されるようなものではありませんが、その上でも特定の人だけではなくて一般層にもその文化や価値が理解してもらえるようにしていきたいです。
私はこれからの社会に対して世界平和をずっと願っていますが、その実現は自分1人の力で出来るようなものではありません。
Co-StudioとはComunion(Co-Studio子会社)の中村さんを通して社長の澤田さんと知り合い、お互いのビジョンに共感する形でこのLRG.の設立を決断しましたが、私がゲームを活用した社会貢献をしたいように、Co-StudioにはCo-Studioのやりたい社会貢献があると思います。
そんな風に、各々の舞台で成し遂げたいことをそれぞれが実行し、時にはお互いの影響を受けてさらに加速させたりとすることができればと思います。
その中で自分たちが作り上げる事業から生まれる楽しいという感情が、社会にとってプラスになっていけば一番嬉しいです。
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