まずは自己紹介をお願いします。
塩野義製薬株式会社のヘルスケア戦略本部の新規事業推進部に所属している六川武美です。
この業界を目指した背景としては、元々薬学部出身なことから、新薬開発を通して世の中に貢献したいと思い、新卒で塩野義製薬に入社しました。
入社後は研究職として9~10年ぐらい働いた後、新規事業推進部の前身となる部署に異動になりました。
創薬研究をする中で、生物学的なアプローチだけではなく、デジタルバイオマーカーやデジタルヘルスに興味を持っていた時に、社内公募により関連した業務を担当していた新設の部署があり、手を挙げて異動しました。
新規事業推進部での仕事内容を教えてください。
医薬品に限らないヘルスケアソリューションを生み出すことがミッションです。
製薬会社としては「何を目的にやっていくのか/何をしていくのか」というところが重要で、会社から与えられたお題がない中でも自分達で模索して、事業計画を作って会社に提案し、プロジェクトを推進しております。
自分たちだけで完結する仕事ではないので、社内のいろんな関連部署の方に協力してもらいながら進めることができる環境は恵まれていると思います。
新規事業推進部では今までどのようなことをしていきましたか?
最初はデジタルセラピューティクス、いわゆるプログラム医療機器(Software as a Medical Device:SaMD、サムディー)を活用した治療のプロジェクトに参画しながら、新規事業の企画に携わっておりました。
SaMDの背景、規制が理解できると薬機法の外側のヘルスケア事業に対しても俯瞰的に見れるようになりました。
新規事業の部署が立ち上がった最初の頃は、社内に新規事業の知見があまりなかったので、「新規事業とは」について部内メンバーで勉強しながらアイデアを出し合っていました。
同時に既に会社として投資していた企業とのコラボレーションについても新規事業推進部で担当していたため、新規事業の提案と他社連携の2軸で動いていました。
KJFに参加した背景やそれらから得られたことを教えてください
2年前に参加した当時はDX推進本部という部署に在籍していて、そこの本部長の方からの紹介でした。
当時はアメリカの企業とコラボレーションというよりも、まず足元で会社としてどんなことできるか。に重点を置いて取り組んでいたのですが「世界ではどのように新規事業に取り組んでいるんだろう」という点で興味がありましたし、海外のスタートアップ企業とのコラボレーションはどのように行なっていけばいいのかを学びたかったので参加させていただきました。
参加させていただいて、そこには今まで教科書で学んできたようなことが実際行われていて、実際にアメリカのスタートアップの方とディスカッションする中でコラボレーションをするためには「この要素って大事だったんだね」とか「こういうことを固めておくとちゃんとコラボレーションは進むんだな」というようなことがイメージできたのは非常に大きかったですし、スタートアップにはエコシステムがあって、その中でどんどん新しいものが生まれていくことなども、自分の知らない世界を知ることができました。
学びとしては、まずは「ペインポイント」をしっかりと持って、そこに対してソリューションをマッチさせていくことが根幹になるということ。
ヘルステックの領域では、アメリカと日本で規制が違うこと、それにより技術の発展するものが違うなど、勉強になりました。
「それぞれの国で背景が違うから成立していること」が具体的にイメージすることができたので、社内でデジタルヘルスの議論をする中で、この違いがある前提で社内のディスカッションができるようになりました。
KJFがきっかけで清峰さんと知り合って、コミュニティーを覗かせてもらってから、当社が新しくLP出資した会社との議論においても「なぜ、そういうことを考えているのか」というバックグラウンドがわかっているので理解が早いですね。
日本とアメリカの根本的なヘルスケアを取り巻く環境についてはKJ Fに参加して自分で知識をとりにいかないと理解できなかったと思うので、本当に良いきっかけになりました。
※「KJF」についての記事
スタートアップ企業へ英語で事業案のPitchをしている六川さん
そのほか新規事業担当者として今まで学んできたことを教えてください
一番大事だなと思ったのは、我々はスタートアップの企業ではなく、母体となる会社があって、その中の新規事業という位置付けを見失わないことです。
従って「自分の会社が何をしていて、どこにどんなケイパビリティがあって強みがあるのか」を理解して、進めていくことが重要だと思います。
それぞれの会社の方針にもよると思いますが、独立して始める新規事業ではないので「うちの会社でやる意味があります」という部分を打ち出していくっていう形で、事業提案することが大事だなと。社内でスムーズに進めていくには、既存事業とシナジー効果を出せるものは何かをどんどん考えていく必要があることを学びました。
Living Labへ参加して学んだ考え方はありますか?
Living Labを調べると、大体4パターンの形式があると言われていました。
大学主導か自治体主導か、ウ―ブンシティのような1企業の新たな取り組みかコンサル主導か。
結局は自分たちが何をしたいかで決めていくことになると思います。
例えばプロダクトがあってこの検証がしたい、と固まっているのであれば、枠だけ貸すので好きにやってくださいというところが相性良いので自治体主導で、まだ検証内容は固まっておらず模索しながら活用したいとなると、コンサル主導で活用した方が、我々の足りないところを補うことができると思います。
なので、Living Labはそれぞれのステージに合わせて使い分けていくものだと思います。
先日、宗像でLiving Labを体験させてもらって、新規事業を前に進めていく中で、どこかのフィールドで実証実験をして、意見を聞き取るというのは重要だと感じました。
また、インタビューしていく中で、より社会の中の一部として検証するという活動が重要だなというふうに改めて感じました。
Living Labは、日本で約400ヶ所あると言われている中で、当然社内の決裁者から「なぜそのエリアでLiving Labをやるのか?」と問われるかと思います。
ただやはり、一度機会があって少し触れさせていただいたからこそわかりますが、ヘルスケアの文脈で経験が豊富なこと、宗像市の協力を得やすい環境にあること、現地でサポートしてくれるメディアがあることで、こちらの要望に合わせてコーディネートしていただけるということはCo-Studioの魅力だと気付きました。今後も活用させていただけたらと思います。
市の職員や住民に対し、ソリューションの使用感テストやインタビューを行う様子
新規事業担当者になって、嬉しかったことや後悔などはありますか?
個人として世の中にサービスを繰り出したという経験がないので、事業を生み出した喜びみたいなものはまだないですけれども、純粋に社内で新規事業ができる環境にあるということが「恵まれている」というのを実感しています。
新規事業の部署は成果が出るまではコストセンターになってしまうので、会社がチャレンジをしようとならない限りは経験することができないと思います。
だからこそ、新規事業に携わっている方は、なかなか事業が前に進まなくても、自分が今凄く良い環境にいるというのを思い出すと良いと思います。
私が辛い時に自分自身に言い聞かせています。(笑)
新規事業はそもそも会社の業績があってのものなので、会社として事業がしっかりしていて、いろんな機能を持っているからこそできる、ということを理解する必要があります。
我々もリソースは限られていますが、スタートアップと比べると活用できるリソースが多いと思います。その点では、恵まれた環境ですし、そこを実感しながらチャレンジすることができるのがやりがいにも繋がります。
六川さんの今後の動き
個人的な動きになりますが、最近はデジタルヘルスに関する業界団体であるJaDHA(日本デジタルヘルスアライアンス)で、規制の外のヘルスケアプロダクトの利活用促進というところの中でのメンバーで活動をしています。
新しい産業としてデジタルヘルスを日本で盛り上げていくための活動をしています。
また、塩野義製薬が昨年リリース中で、シリコンバレーにある「ニレミア・コレクティブ」という、ウェルビーイングテック領域に投資をするベンチャーキャピタルにLP出資をしたので、そこを通じてウェルビーイングテックの最新の情報のキャッチアップ、社内還元も行っています。
この活動を通じて、医薬事業以外の領域のオープンイノベーションを推進していきたいです。
会社として今求めていること
塩野義製薬はHaaS(Healthcare‐as‐a-Service)を実現していくところで、今までは薬品事業だけに特化してやってきたところを、これからは自社の強みを活かしつつトータルヘルスケアの実現を目指しています。
事業の領域を拡大して、医薬品だけじゃなく「健康での困り事をちゃんと解決していこう」という所を目指しているということです。
とはいえ、我々はもともと医薬品事業に特化した会社でしたので、我々が持っていないケイパビリティを持っている企業様と一緒に、そういう世界を作っていきたいと思っております。
新しいことを一緒に探索して、実現できたらと思っておりますので、よろしくお願いします。
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