アートとサイエンスを用いて「心を癒すアートを処方する」をミッション掲げる528株式会社は、ミュージシャンで音楽療法士のjesse(ジェシィ)さんが代表取締役CEOを務める企業です。 神戸市と神戸新聞社がメインとなっているANCHOR KOBEというプロジェクトで、Co-Studio支援のもと設立されました。 ミュージシャンとして活躍してビジネスとは全く無縁だったjesseさんが、どのように企業の設立から運営までこなすようになったのか、身の回りにどのような変化が起こったのかをインタビューしました。
528では、どのような事業をされていますか?
528では、人と人を繋ぐ「ららライン」という高齢者向けオンラインサービスを実施しています。これは高齢者の孤立化を予防するために、画面で話したり歌を歌ったりすることができるサービスです。
医師やケアマネなどで構成された528認定講師によってこれらは実施されており、「ひとりの人を幸せに」をコンセプトにしています。そのため高齢者様が使いやすいオンライン会場をご用意しました。画面の遠隔操作を導入しており、施設や個人に対して生配信でお届けすることが可能です。こちらは兵庫県創業補助金に採択され県からのご支援を頂戴しています。
また弊社では運動時や入眠時といった多くの場面に対応できるような音楽を用意しています。これらは音楽の芸術性に触れながら、科学的に有効な耳からの刺激を活用して、ホルモンの分泌を促して心身ともに健康になっていただくことが可能となっています。
そのほかにも弊社ではSTEAM教育のA(芸術・リベラルアーツ)を担った活動をしており、過去に神戸野田高校ではアートを使ったワークショップを開催しました。学生たちは音楽から自由な発想を得て、自分自身を表現する感覚を養うことができます。
社会のどこに課題を感じてこの事業を始められたのですか?
神戸市と神戸新聞社が運営している、ANCHOR KOBEのTRY STAGEという、ITによる自助共助を目的としたプロジェクトがありました。このTRY STAGEをきっかけに生まれた企業が528です。
私はこのプロジェクトを自治体の目安箱だと勘違いして投書しました(笑)
当時の世の中といえば誰もがコロナ禍で外出する機会が減っていて、引きこもっていると心身ともに弱ってしまうような状況だったように感じていました。直接人と会う機会が減っているからこそ必要なことがあると考えていました。なのでそのことを投書しましたら、自治体が何かするのではなく私がメンバーになりそのために活動する、ということで、すごくびっくりしたのを覚えています。
そんな時にこのTRY STAGEでファシリテーターを勤めていらしたのが弊社COOの今林さんでした。そこからのご縁で、このコロナ禍での人々の健康とお幸せに繋がるための、オンラインによる音楽で交流をするサービスの提供を始めることができました。
これまで具体的にどのような活動をされてきましたか?
私は音楽療法士として活動しており、介護施設の高齢者様に対し、ITツールを通して音楽療法をお届けする試みを行ってきました。
また大手製薬企業のお昼休みイベントにお呼びいただき、音楽を通して社員の方々にSTEAMのAを体験してもらいました。聴く音楽によってキャラクターの表情が違って見えたり、曲を通して季節を感じていただいたりと、ただ演奏を聴いてもらうだけでなく簡単な音楽遊びをすることで、芸術を楽しんでいただきました。
そのほか弊社の音楽サンプルを購入していただいたり、定期的にオンラインコンサートを実施させていただいている企業もあります。音楽を介してご縁が少しずつ広がっていることをとても嬉しく思っています。
jesse様はもともと何をされていた方ですか?
R&B・ジャズのミュージシャンで音楽療法士です。その活動内容はボーカルやピアノ、作曲などさまざまです。DTMと言われるパソコンで曲を作ることもしています。
また音楽を使って心理療法や代替医療を行うための兵庫県認定音楽療法士の資格を持っています。
特に大変だった出来事を教えてください!
私は企業に勤めたこともなく、組織への興味もありませんでした。
そんな中でANCHOR KOBEのTRY STAGE時代に、メンバーとやりとりしていく中で信頼関係が芽生え、会社の設立へと繋がっていきました。
また今林さんを始めとするCo-Studioがサポートしてくださったことで、ここまで順調に事業を進めることができました。
もちろんお仕事も大切ですが、役員や関わってくださる方々が健康とお幸せであることを大切にし、事業に取り組んでいます。
これまで本当に多くの方々のサポートのおかげで順調に事業を進めてこられましたので、大変なこととして思い当たるものがなかなかありません… あ、でも一つだけありました。私はビジネス経験がないのでビジネス用語を知らないんです。ミーティング中に用語を教えてもらい、時には机の下でスマホを使ってこっそり調べていることもありました。
今でもそうですが、あの頃はビジネスに関する書籍や動画を調べて、ビジネスに関する知識を得るのに必死だったのを覚えています。
大変でしたがとても楽しくて現在も進行中です。本当に素晴らしい方々に支えられ、今こうして順調にお仕事ができていることにとても感謝しています。
活動においてどのようなことが楽しいですか?
ビジネスをしていくうえで、新しい人と出会えることに楽しさを感じます。
また役員の健康と幸せを維持しつつ、私の音楽が世の中のお役に立つよう挑戦していくことも、楽しさと希望を感じています。
Co-Studioの澤田さん(CEO)や今林さん(COO)が従来にはなかった音楽の使い方に目をつけてくださったことは、私の中で最初で最後のチャンスのように感じています。Co-Studioのような、新たな事業に目を向けて、新しい可能性を実現していくような人と出会えるミラクルを嬉しく思っています。
中でも澤田さんにはいつも後押ししていただいていて、「儲けにならないことをしていい」と言われたときはとても驚きました。
実際、澤田さんに言われた一言によってお客様が幸せを感じていただけるようなサービスが展開できていると思っています。利益があるかではなく、そこに意義があるか。これは人として、また事業としてもとても大事なことだと思っています。
最後に、528にかける想いをお聞かせください
人間にはアートが必要であることを多くの人に経験して頂きたい、資本主義のように自分を消耗させて主義のために暮らすのではなく、今の自分を信じて、遠慮しないで、幸せを優先しながら生き抜いて良いんだということを体験して頂きたいと思っています。
これまでに社会は多くのものを進化させてきたと思いますが、近年では便利すぎてやりすぎだと感じるものも増えてきました。そのような中でちょうどいい程度の便利さを兼ね備えながらも、人間が自然の一部として守られ生きている、という根底の安心と豊かさを信じられる私たちでありたいと思っています。
音楽は、ノンバーバルです。無意識からの変容を導きます。左脳的思考で終わらせるのではなく、自然に五感と創造性が働き出す、私たちひとりひとりは無限の可能性を持つ主役、行き詰まらない、自分も世界もいくらでもどうとでも良くなっていく、それをいのち全体で感じて頂ける音楽体験をご提供したいと考えています。
また私個人としましては、命がある限り働いていたいのです。この会社を立ち上げてからこのビジネスに関わっていることが大好きですし、今ではこれが仕事ではなく私の最大の趣味、生きる理由になっています。
音楽を通して健康と新しい価値をお届けする、そんなことを永遠とやり続けたいのです。
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